「グループホームに入所したら、通院までは施設にお任せできる」そんなふうに思っていませんか。
私も、母がグループホームに入所したときはそう思っていました。でも実際には、通院の付き添いや、その後の判断を家族が担う場面が、入所後も変わらずやってきます。
母が入所して1年半が経ったある朝、施設の職員さんから一本の電話がかかってきました。それをきっかけに、私は久しぶりに母の通院に付き添うことになりました。入所してからの通院付き添いは、今回が2回目です。
この記事では、その体験を通して感じたこと、そして「入所後も家族の出番はあるけれど、一人で抱え込まなくていい」と気づけた理由をお伝えします。
この記事でわかること
- グループホーム入所後も、通院付き添いが必要になることがある
- 施設職員さんや訪問医と、どんなふうに連携できるのか
- 家族が付き添えないときに選べる選択肢
元気だった母と、施設からの一本の電話
少し前、母が入所しているグループホームで、お食事会がありました。入居者ひとりにつき家族が2名まで参加できる行事で、他の入居者さんやご家族と一緒に食事を楽しめる会です。
今回は私ひとりで参加しました。母はとても機嫌がよく、笑顔でおしゃべりを楽しんでいて、「今日は調子がいいんだな」と、少しほっとして帰ってきたのを覚えています。
その記憶がまだ新しいうちに、施設の職員さんから電話がかかってきました。
ちょうど朝食を済ませ、掃除をしていた時間でした。
電話の内容は、母の最近の様子についてでした。誰もいないリビングで壁に向かって話しかけていたり、夕方になると落ち着かなくなって窓を開け「兄ちゃん!」と叫んだりすることがあるとのこと。
表情が険しくなる時もあるそうです。
職員さんは母のその様子を、施設に来てくださっている訪問医の先生にすでに相談してくれていました。
先生からは「念のため、脳神経外科でCTやMRIなどの検査を受けてみては」という提案があり、検査の結果によっては精神科の受診も考えられる、という見解だったそうです。
そのうえで、職員さんからの電話は「脳神経外科への通院は可能でしょうか」という確認でした。
すぐに行ってほしいという話ではなく、行けるようであれば、行ける日と受診する病院を連絡してほしい、という内容でした。
お食事会であんなに機嫌よく過ごしていた母と、職員さんから聞いた母の姿。
そのギャップに、私は正直、かなりショックを受けました。
時々顔を合わせるだけでは分からない母の一面が、日々の生活の中にあるのだと、あらためて実感した瞬間でした。
通院に付き添うのは誰?頭を悩ませた数日間
「施設に入ったから、もう大丈夫」そんな気持ちは、実は一度も持ったことがありませんでした。
それでも、いざ通院の付き添いとなると、頭を悩ませることがたくさんありました。
入所後にも一度、母のお腹にできたイボを切除するために、皮膚科に2か月ほど通院したことがあります。
その時も待ち時間に母が落ち着かなくなり、すぐに帰りたがるため、姉と二人がかりで付き添った経験がありました。
「また、あの大変な通院生活が始まるのか」という不安が、まず頭をよぎりました。
姉とはここ最近少し距離があり、今回は頼れない気がしていました。
それも、気が重くなった理由のひとつでした。
いろいろ考えた末、思い切って大学生の息子に付き添いを頼んでみることにしました。
断られたらどうしよう、無理をさせてしまわないだろうか、そんな迷いもありながら「行けそう?」と聞くと、「いいよ」とすぐに快諾してくれました。
もし息子が難しければ・・・娘は会社員で平日は頼めないため、保険外サービスの利用も考えていました。息子が迷わず引き受けてくれたことで、そうした選択肢を今回は使わずに済み、安心感と頼もしさを感じました。
病院はどこ?検査は当日できる?:不安なことを、ひとつずつ確認した
母には入所前に通っていた脳神経外科があり、以前の脳の状態の記録も残っています。
私は「そこがいいのではないか」と思いつつ、訪問医の先生が紹介したい病院があるならそちらでも、と職員さんに確認しました。
折り返しの電話で、以前のかかりつけで問題なく、その病院宛に紹介状も書いてもらえるとのことでした。
それでも、私の中には不安が残っていました。
- 1回の通院で、検査までできるのだろうか
- 何度も通院が必要になるのではないか
- 薬の処方まで通院先の先生に変わって、今後ずっと通院が続くのではないか
もう一度職員さんに相談すると、「詳しいことは訪問医の先生に直接確認された方がいいですよ」と教えてもらい、訪問医の先生に電話をしました。
先生の答えは、こうでした。かかりつけだった脳神経外科への受診でよいこと。
通院が長引くのが不安なら、検査後の問診で「施設に入所していて継続的な通院は難しいので、今後はホームの訪問医の処方に切り替えたい」と伝えてよいこと。もし通院を続けるよう言われても、その場で決めずに「検討します」と答えればよいこと。
この電話で、気持ちがだいぶ軽くなったのを覚えています。
病院にも電話で確認すると、事前に受診日を予約すれば、当日に検査まで行える場合が多いとのこと。息子と日程を合わせ、職員さんに受診する病院と希望日時を伝えると、訪問医の先生に紹介状をお願いしてくださることになりました。
あとは病院に予約を入れて、通院の段取りが整いました。
振り返ると細かい電話のやり取りが多かったのですが、不安なことをひとつ確認するたびに、段取りも気持ちも少しずつ整理されていきました。
☑ 通院前に、確認しておくと安心なこと
- 病院はどこにするか(かかりつけがあれば、希望を職員さんに伝えてOK)
- 紹介状はどうなるか(母の場合は、訪問医の先生が書いてくださいました)
- 検査は当日できるか(病院に電話で確認・予約)
- 日頃の生活で気になる変化(着替え・食事・トイレ・落ち着かない時間帯など、職員さんに聞いておくと診察で伝えやすい)
- 通院が長引きそうな不安(訪問医の先生に率直に相談できます)
- 家族だけで付き添えないとき(職員さんの同行などを相談できることも)
※確認する順番ややり方に決まりはありません。施設によって仕組みも違うので、迷ったら、まず施設の職員さんに聞いてみるのが確実です。
通院当日:スムーズだったけど、油断できない場面も

通院の日、母はお食事会の時と同じように、とても機嫌がよい様子でした。
車の中ではずっと鼻歌を歌っていて、その明るさに少し救われる気持ちになりました。
病院は事前に予約していたこと、患者さんが少なかったこともあり、待ち時間はほとんどなく、
診察→検査→診察という流れもスムーズに進みました。
待合室でも母は人目を気にせず鼻歌を歌いながら、
「今何時?」
「この病院は前にも来たことあるね」
「誰にも言わずに出かけてきたから、店(施設のこと)の人が心配してるかもしれん」
と、あれこれ話しかけてきました。
検査中は10分以上じっとしている必要があり、少し心配していましたが、母の場合は問題なく受けることができました。
診察が終わり、「トイレ大丈夫?」と聞くと「行っておこうかな」というので、トイレの前まで付き添いました。
しばらく待っても出てこないので、ドアをノックして開けてみると、リハビリパンツの上げ方がわからず、困った様子の母がいました。
手伝って、なんとか施設に戻ることができました。
その瞬間は、少し切ない気持ちになりました。
それでも、リハビリパンツを汚さず、トイレもきちんと自分で流せていたことに、「まだ自分でできることがある」と、ほっとする気持ちもありました。
検査結果と、職員さんの言葉で立ち止まった瞬間
検査の結果、母の場合、認知症以外の新しい病気は見つかりませんでした。
ただし、認知症の進行は確認され、記憶力はほとんど残っていない状態とのことでした。
これ以上大きく進行することはあまりないだろうという見立てでしたが、これから周囲から見ると不思議に感じるような、落ち着かない行動が増えるかもしれないと言われました。
血糖値がやや高めであること、骨密度が弱くなっていて、レントゲンで腰や首の骨が部分的に潰れていることも分かり、転倒による骨折には注意するようにとのお話でした。
覚悟していたつもりでした。
それでも、実際に「記憶力はほとんど残っていない」とはっきり言われると、やはりショックでした。きれいごとを言うつもりはありません。
ただ、これは現実として受け止めるしかないのだと、自分に言い聞かせました。
ここに書いた検査結果や今後の見通しは、あくまで母の場合の体験です。症状の進み方や今後の見通しは一人ひとり違うため、気になることがあれば、かかりつけの医師や施設の訪問医の先生に直接相談されることをおすすめします。

施設に戻り、担当の職員さんに検査結果を報告した時のことです。
職員さんはこう言ってくれました。
「私たちは、見守りやお手伝いが増えることを、大変だとは全く思っていません。
むしろ、お母様自身がずっと鼻歌を歌っていたり、落ち着かなくなったりするのは、ご本人がきついのではないかと思うんです」
その言葉を聞いて、私はふと立ち止まりました。
母の鼻歌は、ただご機嫌だから、歌いたいから歌っているのだと思っていました。
でも、本当は言葉にできない何かを抱えていて、それがああいう形で表れているのかもしれない・・・
そう思うと、切なく、少し悲しい気持ちになりました。
職員さんは、そんな私の様子を感じ取ってくれたのか、続けてこう言ってくれました。
「お母様のことは、そんなに心配されなくても大丈夫ですよ」
その一言に、私はとても救われました。
母の変化に気づき、寄り添ってくれる人が、家族以外にもいる。
そのことが、何よりの支えになった瞬間でした。
なお、これまでとは違う行動や幻覚・幻聴が増えた場合、薬の処方や精神科の受診が必要になるのではないか・・・これも、受診前に訪問医の先生へ電話で相談したときに確認した、私の不安のひとつでした。先生からは、精神科の訪問医の先生が月に2回施設に来てくださっているので、基本的には外部の精神科を受診する必要はないと聞いていて、これも大きな安心材料になりました。
通院と向き合うために、知っておきたいこと
今回の経験を通して、「通院は入所後もなくならない」という現実と同時に、「一人で抱え込まなくていい」ということも実感しました。私が今回学んだことを、体験の延長として少しだけまとめておきます。
☑ 通院に付き添うとき、私が意識したこと
- 入所後も、通院は家族の役目として残ることがあるのだと、心づもりしておく
- 診察で「普段どこまで自分でできるか」を聞かれることがあるので、事前に施設の職員さんに確認しておくと安心
- 家族だけで抱え込まず、施設の職員さんや訪問医の先生に、不安なことはそのまま伝えてみる
診察の時、医師から「普段、服を迷わず自分で選べますか」など、日常生活でどこまで自分でできているかを聞かれる場面がありました。
入所して1年半が経つ母の、今の様子を細かく把握しきれておらず、答えに困った部分がありました。
体温や血圧などのバイタル記録は、職員さんが直近1か月分を用意してくださっていました。
だからこそ、着替えや食事など生活面の様子も、事前に職員さんへ確認しておけばよかったな、と感じています。
また、今回は息子と予定が合い、家族で付き添うことができましたが、この先もいつも家族だけで対応できるとは限りません。
そんなときのために、施設の職員さんに聞いてみたところ、いくつか選択肢があることも教えてもらいました。
早めに申し出れば、施設によっては職員さんが当日同行してくれる場合もあるそうです(場合により有料のこともあるようです)。
ほかにも、別の入居者さんが利用されている介護タクシーが対応が良いとのことで、その連絡先を教えてもらえることもあるそうです。
家族での付き添いがどうしても難しいときの選択肢として、介護保険では対応しきれない「ちょっとした付き添い」を頼めるクラウドケアのようなサービスを知っておくのも一つだと思います。
まとめ:入所後も家族の出番はある。でも、一人で抱えなくていい
グループホームに入所したあとも、通院の付き添いや、その先の判断を家族が担う場面は、なくなるわけではありません。
今回の経験を通して、私はそのことをあらためて実感しました。
それでも、今回感じたのは「一人で全部抱え込まなくていい」ということでした。
施設の職員さんは母の小さな変化に気づき、支えてくれています。
訪問医の先生にも、不安なことを率直に相談することができます。
家族だけで頑張らなくても、まわりに頼れる人がいる・・・それが、私にとって一番の安心材料でした。
もし今、「施設に入れたのに、また通院で悩んでいる」と感じている方がいたら、伝えたいことがあります。
それは、入所後も家族の出番があるのは、特別なことではないということ。
そして、困ったときは施設の職員さんや訪問医の先生に、そのまま気持ちを伝えてみてほしいということです。きっと、一緒に考えてくれるはずです。
- 通院付き添いは、入所後もなくならない「家族の役目」のひとつ
- 施設の職員さん・訪問医の先生と、率直に話すことで一緒に考えてもらえる
- 家族だけで無理なときは、職員の同行や介護タクシー、保険外サービスという選択肢もある
母の笑顔や鼻歌を思い出すと、今でも少し切ない気持ちになります。
それでも、これからはできるだけ面会に行き、母の様子を自分の目でも見ていきたいと思っています。
この記事が、同じように施設入所後の通院付き添いに悩む方にとって、少しでも参考になれば嬉しいです。

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