「こんなに大変なのに、なぜわかってもらえないんだろう」
認知症の親の介護をしながら、そう感じたことはありませんか。
夜中に外に出ていった親を追いかけた夜、被害妄想で「あなたが盗んだ」と責められた日、仕事に行っている間も「大丈夫かな」と頭を離れない時間・・・。
そうした毎日を重ねながら、要介護認定の結果を見て「この数字、本当にうちの母のこと?」と感じた方も、少なくないと思います。
介護度が低く出ることと、家族の介護が楽なことは、まったく別のことです。
制度のせいでも、家族の準備不足でもありません。
認定調査は30分ほどの限られた時間の中で行われます。
夜中に繰り返す徘徊、毎日続く被害妄想、目を離せない見守りの負担は、その短い時間には見えにくいことがあります。
だからこそ、普段の様子を「記録しておくこと」「調査に同席して伝えること」「主治医に知ってもらうこと」が、思っているより大切な意味を持ちます。
結果に納得できないと感じたときは、ケアマネジャーや地域包括支援センター、市区町村の窓口に相談してよいのだということも、知っておいてほしいことのひとつです。
この記事では、私自身の体験をもとに、認定調査で家族の大変さが伝わりにくくなる理由と、普段の様子をできるだけ伝えるために家族にできることを整理しています。
この記事でわかること
- 認定調査で家族の大変さが伝わりにくくなる理由
- 調査当日に同席して伝えておきたいこと
- 記録しておくと役立つこと
- 主治医への伝え方のヒント
- 結果に納得できないときの相談先
1.認知症なのに介護度が低い…「こんなに大変なのに」という気持ち
私の母は、要介護1の認定を受けていました。
財布をしまい忘れるたびに「あなたが盗んだ」と責められることが続きました。
外に飛び出してしまい、なかなか帰ろうとしない日もありました。
夜に外に出ていき、道に迷っているところを探しに行ったことも、一度ではありませんでした。
仕事中も「今ごろどうしているかな」と、頭の片隅からずっと離れませんでした。
それでも、介護度は要介護1のまま。
本当はデイサービスに毎日通ってほしかったのですが、要介護1では週4回がマックスでした。
ケアマネさんに相談しても、「介護度の見直しは判断が厳しい」と言われました。
「私の大変さは、この数字に入っていないの?」
そう思ったのは、一度だけではありませんでした。
同じように感じている方がいたら、伝えたいことがあります。
介護度が低くても、あなたの介護が軽いわけではありません。
そして、伝え方を知っておくことで、状況が変わる可能性があります。
もう限界かもしれないと感じているときは、こちらの記事もあわせてご覧ください。
→ 介護で限界を感じたときの相談先|家族だけで抱え込まないために
2.要介護度は「認知症の重さ」だけで決まるわけではない
介護度が思ったより低く出たとき、多くの家族が「なぜ?」と感じます。
その背景には、要介護認定の仕組みがあります。
2.1.判定の基準は「要介護認定等基準時間」
厚生労働省の説明では、要介護認定の一次判定は「要介護認定等基準時間」をもとに行われます。
これは、実際に家庭で介護している時間そのものではなく、介護の必要性をはかるための「ものさし」のようなものです。
たとえば、寝たきりで食事・排泄・入浴・移動などに常に介助が必要な方は、介護にかかる手間が見えやすく、介護度も重く判断されやすい傾向があります。
一方で、認知症があっても、自分でトイレに行ける、食事ができる、歩けるという場合、身体的な介助時間だけを見ると短く見えることがあります。
そのため、寝たきりの方と比べると、介護度が低く出ることがあります。
でも実際には、歩けるからこそ夜中に外へ出てしまう、目を離せない、被害妄想への対応に時間がかかるなど、家族には大きな見守り負担があります。
この「動けるがゆえの危険」や「精神的な見守り負担」は、短い調査時間では十分に伝わりにくいことがあります。
結果として介護度が低く出たとき、「こんなに大変なのに」と感じるのは、そこに理由があるのだと思います。
家族の実感としてはつらいところですが、要介護認定では病名の重さや認知症の進行度だけでなく、「介護の必要度」という視点で判定されます。
そのため、夜間の見守りや精神的な負担、周辺症状への対応が、家族の実感どおりに表れにくいことがあります。
2.2.周辺症状の大変さは、短い調査では見えにくい
徘徊・暴言・被害妄想・昼夜逆転・夜間の見守りといった周辺症状は、家族にとって非常に大変です。しかし30分ほどの訪問調査の中では、毎日繰り返される症状の頻度や、深夜の対応の実態は、なかなか見えにくいのが現実です。
調査員の方は、限られた時間の中で丁寧に判定してくださっています。
制度の仕組み上、短い調査では見えにくい部分がある——そのことを知っておくだけで、「どう伝えるか」を意識できるようになります。
3.認定調査で「家族の大変さ」が伝わりにくくなる場面

なぜ、毎日の大変さが調査に反映されにくいのか。いくつかの場面を整理します。
3.1.本人が調査の日だけしっかりしてしまった
私の母の場合、調査当日はいつもと様子がまるで違いました。
口調がはっきりして、片足で立つ確認もいつもより安定していました。
「家事は全部自分でやっている」と自慢気に答える姿を見て、私はとまどいました。前の夜も外に出かけようとしていたのに・・・。
このような経験をお持ちの方は、少なくないと思います。
見知らぬ人の前で張り切ってしまったり、緊張からしゃきっとすることは、認知症の方によく見られることです。
本人も家族も責められることではありません。
3.2.夜の徘徊・被害妄想・見守りの負担は、30分の調査では見えない
「財布を盗まれた」という訴えが毎日続いていても、調査の場では穏やかに話せてしまうことがあります。
夜中に外に出ていき、道に迷って帰れなくなった体験も、調査員の方が訪問する短い時間には映りません。
調査はその瞬間の様子を確認するものです。
毎日の大変さを積み重ねてきた家族にとって、その落差がつらく感じられるのは当然のことです。
3.3.「できますか?」の答えと、実際の介護量のギャップ
調査では「〇〇はできますか?」という確認が多くあります。
本人が「できる」と答えれば、それが判定の基礎になります。
しかし実際には、「できるけれど、毎回うまくいかず後処理が必要」「自分でやろうとするから目が離せない」という状況も多くあります。
この「できる・できない」と実際の介護量のギャップが、家族の大変さを見えにくくすることがあります。
4.認定調査に同席して、伝えておきたいこと

同席できる場合は、ぜひ同席してください。
そして、できれば調査が終わったあとに、本人に聞こえない場所で調査員の方に声をかけてみてください。
私は2回目の調査のとき、調査員の方が帰る際に「まだ話したいことがある」とお伝えして、車の中でお話しました。
母に聞こえないよう場所を変えて、「足腰はしっかりしているけれど、それが原因で外に出てしまうこと」「被害妄想で毎日責められていること」を口頭でお伝えしました。
調査員の方はメモを取ってくださいました。
事前に伝えたいことをメモにまとめておくと、緊張していても伝え漏れを防げます。
調査当日に伝えておきたい6つのこと
- 「今日の様子と、普段の様子は違います」とはっきり伝える
- 症状の種類(徘徊・被害妄想・暴言・夜間の行動など)を具体的に話す
- 症状の頻度(ほぼ毎日か、週に何回かなど)を伝える
- 症状が出やすい時間帯(夜間・夕方など)を伝える
- 対応にかかる時間(20分かかる、1時間探した、など)を伝える
- 本人が「できる」と答えても、実際には介助や見守りが必要な場合はその旨を伝える
5.記録しておくと、次の調査で伝えやすくなること
調査の場でうまく伝えられなかった場合でも、日常の記録が次につながります。
毎日つける必要はありません。「大変だった日」だけでも続けることに意味があります。
シンプルな記録の例
📅 5月20日(火)夜11時
症状:外に出ようとした
対応:声かけで戻るまで約20分かかった
📅 5月23日(金)昼
症状:「財布を盗まれた」と強く訴えてきた
対応:一緒に探して落ち着くまで30分ほどかかった
「何日に、どんな症状が、どれくらいの頻度で、対応に何分かかったか」が記録されていると、次の調査や区分変更の相談のときに、具体的な言葉で伝えることができます。
6.主治医に日常の困りごとを伝えるために
要介護認定では、主治医の意見書も判定に使われます。
受診のたびに症状の変化を伝えておくことが、意見書の内容にもつながります。
診察は短時間で終わることが多いため、小さなメモを1枚持参して「先生に見ていただきたいことがあります」と渡す方法が伝えやすいです。
伝えるとよい内容の例:夜間に何度起こされているか、徘徊や被害妄想が何日おきに出るか、対応にどれくらい時間がかかっているか。
「大変なことを話すのは申し訳ない」と思う必要はありません。
日常の実情を知ってもらうことは、適切なケアを受けるためにとても大切なことです。
私自身、今振り返ると、主治医への伝え方に後悔があります。
母は月に一度、薬の処方のために通院していました。
ただ、母が行きたがらない日があり、そういうときは私だけ病院へ行き、診察は受けずに薬を処方していただくこともありました。
当時は「また来月ちゃんと連れてきたら大丈夫」と思っていました。
でも今思うと、できれば毎回一緒に連れて行き、診察を受けてもらえばよかったと感じています。
認知症の進み具合、夜中の外出、被害妄想の頻度、見守りの大変さ——そうした日常の困りごとを、そのたびに先生に伝えるべきでした。
もし母がどうしても行けないときでも、私だけでも先生と少し話せていれば、主治医の先生に現在の状況を知ってもらい、意見書にも現実の様子が反映されていたかもしれません。
当時の自分を責めているわけではありません。
連れて行くのが大変なこと、私自身が一番よくわかっています。
ただ、今から思うと、そういう機会を大切にしておけばよかったな、と思うのです。
これから認定調査を控えている方は、診察のたびに一言でいいので、日常の困りごとをメモで渡してみてください。
「先生に見てほしいことがあります」という一言が、意外と大きな助けになることがあります。
7.結果に納得できないとき:相談先と区分変更の考え方
認定結果に納得できないと感じたら、一人で抱え込まずに相談することができます。
まずはケアマネジャーに気持ちを伝えてみてください。
ケアマネさんは、状況を把握したうえで次の手を一緒に考えてくれます。
市区町村の介護保険担当窓口や地域包括支援センターでも、区分変更申請についての相談を受け付けています。
「区分変更申請」とは、要介護度の見直しを求める申請です。
必ずしも認定が変わるとは限りませんが、状態が明らかに変化している場合には、申請を検討する価値があります。
私自身、最初に地域包括支援センターに相談したとき、「このくらいの状態では介護度がつかないかもしれない」と言われ、一度は申請をあきらめてしまいました。
ところが、主治医の先生から「断られても申請してください」と言われ、もう一度連絡して申請をお願いしました。
実際に調査を受けると、要介護1の認定がおりました。あきらめずに申請してよかったと、今は思っています。
8.まとめ:介護度が低くても、あなたの介護が軽いわけではない
足腰がしっかりしていて、トイレにも行けて、食事も食べられる。
でも夜は徘徊する、被害妄想で責められる、目が離せない・・・そういう大変さは、確かにあります。
その全部が数字に入っていなくても、あなたが毎日向き合っている介護は、本物です。
諦めずに、困っていることを具体的に伝え続けることが大切です。
それでも介護度が変わらないこともある、というのが正直なところです。
でも、伝えないよりも伝えた方が、状況が動く可能性は高くなります。
家族にできる5つのこと
- 認定調査に同席する
- 「今日の様子と、普段は違う」と調査員に伝える
- 症状の種類・頻度・対応時間を記録しておく
- 主治医に日常の困りごとを伝える
- 納得できないときは、ケアマネや市区町村の窓口に相談する
一人で抱え込まず、相談できる場所を頼ってください。
あなたの大変さは、あなただけが知っているわけではありません。
デイサービスの活用や、在宅介護を続けるための工夫については、こちらの記事もご参考にしてみてください。
→ デイサービスを嫌がる親への対応|私が試した声かけと工夫

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