認知症の母が財布を何度も探すようになり、私はついに通帳やお金を預かることになりました。
預けたことを忘れて、私が泥棒扱いされる──そんな最悪のシナリオが頭をよぎりながらも、
母の様子に心を動かされ、私はその役目を引き受けました。
実際には、想像以上に心がすり減る出来事もありました。
それでも、母のお金を「母のために」守りたい。
そんな気持ちで工夫し、悩みながら歩んできた記録です。
同じような場面で迷っている方へ、少しでも参考になれば嬉しいです。
💭 預かることへの葛藤と、小さな安心
母がだんだん物忘れをするようになってきた頃、
何度も何度も財布をなくしては探す毎日が続いていました。
「もう母にはお金を管理することは難しくなってきたのかもしれない」
そう思うようになっても、私はすぐに預かる気にはなれませんでした。
だって、きっと預けたことを忘れてしまう。
そして、私が勝手に取り上げたと言われたら──そんなの絶対イヤ!
それでも、毎日財布を探して落ち込む母の姿を見ているのもつらくて…。
ある日、ついに私は言ってしまいました・・・
「私が預かっておこうか? 必要な時はちゃんと渡すから」
しばらく沈黙のあと、母は小さくうなずきました。
きっと渡したくない気持ちもあったと思います。
でも、自分の状態にどこかで気づいていたのかもしれません。
母は通帳や印鑑も一式、私に手渡しました。
📝 メモの工夫と、しばらくの平穏
私は母の財布に、数万円のお札と小銭を入れて、
さらに「〇〇にお金と通帳を預けた。◯年◯月◯日」と書いた直筆のメモ紙を入れてもらいました。
財布を開けるたびにこのメモを見て、「ああ、そうだった」と思い出してくれたら──
そう願っていました。
しばらくはその方法でうまくいっていたのです。
🌀 それでも訪れた“物取られ妄想”の嵐
けれど1ヶ月も経つと、メモ紙はどこかへいってしまい、
ついに“物取られ妄想”の嵐が吹き荒れ始めました。
そのたびに私は必死で説明しました。
でも母は聞き入れてくれず、怒りの矛先はいつも私に向かってきます。
「やっぱり預かるんじゃなかった…!」
「こんなお金、返してやる!」
──何度もそう思いました。
けれど、思いとどまりました。
母だってつらいんですよね。
自由にできないもどかしさ、誰かに怒りをぶつけたい気持ち。
それが一番近くにいる私に向かってくるだけ。
でも…私だって、つらいよ、母さん…。
🏠 母の人生とお金──渡してあげたかった思い
母は若い頃から苦労してきた人でした。
体の弱い祖母に代わって子どもの頃から働き、
自由に学校へ通うこともできなかったと、話してくれたことがありました。
結婚してからも贅沢なんて一切せず、
父を早くに亡くしてからは、家事に育児に仕事に──すべてを一人でこなしてきました。
私を短大まで行かせてくれた母。
そんな母の大切なお金、今こそ自由に使ってほしいのに、それができない。
せつなくて、悔しくて、申し訳なくて…。
でも私は決めています。
このお金は、母のためだけに使っていく。
💵 毎日数えるお札と、私の工夫
母は財布のお札を毎日数えていました。
何度も何度も、触って、めくって、確認して。
お札はボロボロに破れかけていて、
「なんでこんなに破れとるんやろ?」と、母は私に不思議そうに聞いてきます。
自分が何度も数えていることを、母は覚えていません。
私はこっそりボロボロのお札をゆうちょ窓口で新札に替え、それを財布に入れておきました。
毎日お金を数える母を想像するたび、切なくなります。
だから思うんです。
新しいお札に替えたから、思いっきり数えて大丈夫だよ、母さん😊
財布の場所が変わっていたときは、私が“パトロール”して元に戻す。
それだけで、被害妄想が少し落ち着くこともありました。
🔧 私が実際にやってよかった工夫
📝 1. メモ紙で「預けた事実」を残す
母の直筆で「預けた」ことを書いたメモを財布に入れることで、
開くたびに“思い出すヒント”になりました(ただし効果は一時的でした…)。
💵 2. 財布に数万円だけ残しておく
“自分のお金がある”という安心感のために、あえて少額を入れておきました。
🧭 3. 銀行口座を「ゆうちょ一本化」にしておいた
母は3つの銀行口座を持ち、年金と遺族年金の振込先もバラバラでした。
近くにATMがない銀行もあり、引き出すために移動するのも大変だったため、
思い切ってすべて近くのゆうちょにまとめることを提案し、一緒に同行し手続きしました。
(このときはまだ、母は「もの忘れ外来」を受診する前の状態でした)
これは今になって本当に「やっておいてよかった」と思える対策です👍️
🚪 4. 財布の定位置をパトロール
財布がなくなる前に、私が“定位置”に戻すようにしました。
これで混乱や不安が少し和らいだと思います。
🧾 こんなこともありました(体験メモ)
💡 定期貯金を普通貯金に移せた話
母はゆうちょ銀行に「普通貯金」と「定期貯金」の両方を持っていました。
定期貯金は本人が窓口で手続きしないと引き出せないと知っていたのですが、
「将来何かの支払いが必要になったときのために、普通貯金に移せないかな?」と思い、ゆうちょの窓口で聞いてみました。
「母の定期貯金なのですが、母の普通貯金に移すことは私が手続きできませんか?」
すると、窓口の方が確認してくださり…
「同居のご家族ですか?」
「はい」
「身分証明書をお願いします」
(運転免許証を提示)
という流れで、その場ですぐに移し替える手続きができました。
⚠ 注意点と補足
これは約5年前の実体験で、現在は対応が異なる場合もあります。
また、ネット上では「本人の委任状が必要」と書かれていることもあります。
ただ、困っている方がいれば、
「一度、相談してみるのもひとつの方法かもしれません」とお伝えしたいです。
🛑 「認知症です」とは言えなかった理由
手続きのとき、私は窓口で**「母は認知症で…」とは言いませんでした。**
なぜなら、認知症であると分かった時点で、
口座が凍結されることがあると知っていたからです。
実際には、介護する側にとって大きな支障が出ることもあるので、
次のような対応を心がけていました。
- 「同居している家族です」とだけ伝える
- 医療的なことは言わない
- 「体調不良で来られない」など柔らかい表現を使う
🌈 いま思うこと
母が入所した今でも、私は思っています。
「母のお金は、母のために。母の自由に使ってほしい」と。
でもそれも、今はなかなか叶わない現実があります。
それでも、私はこれからも、このお金を母のために、大切に使っていこうと思います。
✨ あとがき
財布を預かる。
それだけのことが、こんなにも心を揺らすなんて──
介護って、“正解”がなくて、迷いの連続ですよね。
それでも、毎日悩みながらも向き合ってきた時間が
今の私の糧になっていると、少しずつ思えるようになってきました。
もしこの記事が、同じように悩んでいる誰かの
「ちょっと気がラクになったよ」につながったら、とても嬉しいです🍀
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