「母には、できれば最期までここで過ごしてほしい──」
施設探しを始めた頃、私はそんなふうに思っていました。
だからこそ、“看取りが可能な施設”という条件は、当時の私にとって大きな魅力だったんです。
でも今は、少しだけ考え方が変わってきました。
この記事では、私自身の体験をもとに
施設選びの中で感じたこと、そして「本当に大切なのは何か」について綴ってみようと思います。
🌱 看取りがあることの安心感と、そこにあった“違和感”
最初に母がお世話になったのは、「サービス付き高齢者向け住宅」でした。
ホーム長さんが看護師さんで、体調の変化にもすぐに気づいてもらえる安心感がありました。
また、入院された方が施設に戻ってきて、最期まで過ごされた──そんなお話も聞いたことがあります。
「もし母に何かあっても、ここで見守ってもらえるのかもしれない」
そんな気持ちが、このサ高住を選んだ理由の一つです。
でも、いざ暮らしが始まってみると……
別の記事にも書いたように、「介護度の見直し」や「併設デイサービスの利用が必須」といった点に、少しずつ違和感を覚えるようになっていきました。
👉️サ高住で感じた違和感についてはこちらの記事で紹介しています。
“最期まで安心して暮らせる場所”を選んだつもりだったのに、
「本当にここでよかったのかな…」という迷いが、だんだんと大きくなっていったのです。
🏠 グループホームという選択──「いまを大切にできる場所」
そんなときに連絡をいただいたのが、第一希望だったグループホームからの「空き」の知らせでした。
でも正直、すぐに決められませんでした。
理由はいくつかあって、その一つが「看取り対応」はしていない施設だということでした。
もし介護度が進んで、足腰が弱くなり、入浴の介助が難しくなったときは──
また別の施設へ移らなければならない可能性もある、と聞いていました。
それでも私は、思い切って決断しました。
“この先”よりも、“いま”を大事にしたい。
「今の母が、穏やかに笑顔で過ごせる場所」が、今は一番必要なんじゃないか──そう思ったんです。
グループホームでは、スタッフさんの目がよく届くし、ドアの施錠もなく、母はとてもリラックスして過ごしています。
私の心にも、「やっぱり、移ってよかったな」と、あたたかい安心感が広がっています。
🟢 「終の住処」へのこだわりを手放してみて
サ高住を選んだ頃の私は、「最期までいられること」に安心を求めていました。
でも実際に介護が始まってみて気づいたのは──
“その時の母に合った場所で、快適に過ごせること”の方が、ずっと大切なのかもしれないということです。
母はまだ比較的元気で、自分のこともある程度はできます。
もし最初から、まわりに介護度の高い方が多い施設に入っていたら……
きっと母は「自分は元気なのに」と居心地の悪さを感じていたかもしれません。
だからこそ、未来のことを一度に決める必要はなく、
その時その時で「今の母に合う場所」を選び直していけばいい──
ようやく、そんなふうに思えるようになりました。
※なお、ここで書いている「グループホームは看取りがない」「サ高住は看取り対応がある」といった内容は、あくまで私の母がお世話になった施設の話です。
施設によって違いますので、選ぶときはぜひ個別に確認してくださいね。
🔄 状況が変われば、施設も変わっていい
サ高住には認知症ではない方も多く、必ずしも介護度が高い人ばかりではありません。
私が当時感じていたのは──介護老人保健施設(いわゆる老健)や特別養護老人ホーム(特養)のように、もっと介護度が重い方が中心の施設は、母にはまだ馴染めないのではないか、ということでした。
ちなみに、老健や特養は原則として要介護3以上でないと入所できない施設です(一部、特例で要介護2から入れる場合もあります)。
「高齢者施設は、最期まで過ごす場所を一度で決めるもの」
そんなふうに思っていた私の考えは、良い意味で変わりました。
今、母が暮らしているグループホームでは、笑顔が増え、
スタッフさんとのやり取りの中にも、ほっとできる時間があります。
もちろん、これから介護度が上がったり、母の身体が変化したときには、
また別の場所を考えることになるかもしれません。
でも、それはそれで大丈夫。
そのときの母の状態を見て、また一緒に考えればいいんです。
「一度決めたら、ずっとそのまま」じゃなくてもいいし、先のことを心配して決めなくても、
母の身体と心に合わせて「暮らしの場」も柔軟に変えていこう。
そう思えるようになった今、私自身の気持ちもずっとラクになりました。
💬 まとめ:施設入所はゴールじゃない。これからも“母に合う場所”を探し続けていく
「終の住処」という言葉にこだわっていた頃の私は、
一度入所すれば、そこで完結するものだと思っていました。
でも、介護はずっと続いていくもの。
施設選びも、“一度決めたら終わり”ではないんですよね。
むしろ、“いまの母に合う場所”を、その都度選び直していく。
それが、母がそのときそのときを心地よく過ごしていける、一番の道なのかもしれません。
施設入所はゴールじゃなくて、ひとつの通過点。
だからこそ私は、これからも母の変化に気づいて、
小さなサインを見逃さないように──いつも心のアンテナを張っておきたいと思っています。📡
もちろん、できることなら……
今のグループホームで、できるだけ長く、穏やかな日々を過ごしてくれたら。
そんなふうに、ささやかな願いを込めながら、今を大切に見守っていきたいと思っています。
実際に私がグループホームに移る決断をしたときの経緯は、こちらで詳しくまとめています。
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