親の家、この先どうしよう──
ふとしたときに、そんな不安がよぎることはありませんか?
私は今、母の名義になっている家に暮らしています。
子どもたちもいずれ巣立ち、いずれこの家に住むのは私一人に。
広すぎる家、通勤の負担、そして何より「空き家にしたらどうなる?」という漠然とした不安……。
そんなとき、たまたま目にした自治体の広報誌をきっかけに、
空き家相談と「家財整理セミナー」に参加することになりました。
軽い気持ちで聞き始めたセミナーが、思いがけず心に残り、
これからの暮らし、自分の人生の終い方まで、深く考えるきっかけに。
🧹 家財整理セミナー──“もしものとき”のために今できること
📸 講師の実体験──「遺影がない」という後悔
講師を務めたのは、「(一社)家財整理相談窓口」の代表の方で
ご自身の経歴などを紹介され、
現在52歳で、なんと20歳で結婚されたそうです。
ところが奥さまは40歳という若さで突然亡くなられたとのこと。
そのとき一番困ったのが、奥さま一人で写っている写真が一枚もなかったこと。
アルバムには子どもたちの写真ばかりで、遺影は仕方なく「一緒に写っていた写真を切り取って作った」のだとか。
「毎年1枚“遺影用”に写真を撮ることをお勧めします。」
とおっしゃっていました。
💰 30万円から5000万円──そして「全額寄付します」の一言
ある日、ひとり暮らしの80代女性が亡くなり、部屋から現金30万円が見つかりました。
そこから37年間音信不通だった娘さんの連絡先が判明し、遺品整理の依頼が入ったそうです。
ところがその娘さん、当初は一度も実家に来ることはなく、
「その30万円ですべての遺品整理をお願いします」とだけ依頼されたそうです。
作業を進めると、なんと800万円の現金が出てきたため再度連絡。
そのとき初めて娘さんが実家に来られました。
その後、作業を続ける中で次々と現金や通帳が見つかり、
最終的には、総額5000万円近い現金や通帳、そして遺書も発見されたそうです。
「このお金の一部は、見つけてくれた方に。
残りは恵まれない子どもたちに寄付してください。」
という内容の遺書でした。
もちろんその後も、すべて娘さんに引き渡されたそうですが……
その際、娘さんは涙を見せることもなく、
ハンカチで頬を押さえるしぐさをしながら一言──
「このお金は、全額寄付させてもらいます。」
そう言って持ち帰られたとのことでした。
「本当に寄付されたかどうかは、分かりません」と、
講師の方は静かにおっしゃっていました。
寄付してくれたことを祈るばかりですね・・・
💤 枕カバーの中から出てきた「捨てないで」の手紙
もうひとつのエピソードは、遺品整理の途中で枕カバーの中から出てきた手紙。
「この枕は、亡くなった妻が最後に使っていた枕なので永久保存してほしい。」
それは、闘病生活を送っていた奥さまが長年使っていた思い出の枕だったそうです。
最初依頼された娘さんは、
「どうしてこんなに物を残して…」と、
後始末にうんざりしていた様子だったそうですが、
💤 故人の枕カバーの中からのメモで
それは亡くなった母のものだったと知り、
「無口だった父が、母をこんなに想っていたのか」と、
父の思いやりを感じた瞬間に、
それまでの父親に対する気持ちがふっと変わり、
自然と涙がこぼれたそうです。
そして講師の方のことば──
「私たちは、物の価値だけで整理するのではなく、“思い出”を大切にして整理しているのです」
この言葉に、じんわりと心が温かくなりました。
🚫 悪質業者の話──不法投棄の責任は依頼主に!?
セミナーでは、実際に起きた怖い話も紹介されました。
悪質な遺品整理業者の中には、金品類だけを持ち去り、
残りの家具や家電を不法投棄するようなケースもあるそうです。
しかも、その中から住所がわかるものが見つかった場合、
🚨 依頼主である家族が罰則を受けることもあるのだとか。
「片付け=モノの処分」ではなく、
「想いと責任をもって整理する」という意識が大切なんですね。
🧾 死後事務委任契約という選択肢
セミナーの中では、「死後事務委任契約」についても紹介がありました。
これは、自分が亡くなったあとに必要な手続き──
役所への届出、葬儀、家の片付けなど──を第三者にお願いする契約です。
元気なうちに契約しておけば、
離れて暮らす子どもや家族に負担をかけずに済む可能性があるとのこと。
私も「自分に何かあったとき、子どもたちに困ってほしくない」と思い、
この制度は選択肢のひとつとして、心にメモしておこうと思いました。
🏡 我が家の未来相談会──現実と制度のギャップ
今回のセミナー、私の本来の目的はこっちでした(笑)
私が住んでいる家は、母の名義のまま。
いずれ子どもたちが独立して、私一人になったとき、
空き家にして引っ越す? 売る? 貸す? と悩んでいたのです。
🧑⚖️ 専門家の答えは──母名義のままでは何も出来ない。
宅地建物取引協会と司法書士、両方からの答えは同じでした。
「お母さまの名義のままでは、売買も賃貸もできません」
意思確認が取れない(=認知症)ため、契約はできないとのこと。
選択肢としては:
- 今の家に住み続け、相続のタイミングで対応
- 空き家のまま引っ越し、定期的にメンテナンスに来る
とのことでした。
💸 名義変更はできるけど、40%の贈与税が…
「母から私に名義を変える」という方法もあるそうですが、
その場合、贈与税が土地・建物の評価額の約40%かかるという現実が…😱
今すぐ売るわけではないなら、無理に変更するのは得策ではないと・・・
司法書士の方からは、
「身内のどなたかに住んでもらうというのも、一つの方法ですよ」
と提案もいただきました。
それは、私も考えましたとも。
先日姉に「この家に住まない?」と聞いてみたんです。
結果は…
「無理無理!住みきらん!」(即答)
…ですよね〜🤣
⚖ 成年後見制度の壁と、見直しの動き
現時点では、母の不動産を動かすには成年後見人を立てるしか方法がないそうです。
ただし…
- 必ず子どもがなれるわけではなく、司法書士など第三者になることも
- 毎月数万円の報酬が発生
- 一度後見人がつくと、基本的に“終身”
こうなると、なかなか踏み切れませんよね。
司法書士の方いわく、
「不動産の売買のときだけ一時的に後見人をつけられるようにする法案」が検討されているそうですが、
まだまだ先の話とのことでした。
🌈 最後に──思いがけず深く考えさせられた一日
本当は「空き家のことを相談するだけのつもり」で申し込んだセミナー。
申込み時に職員さんから「家財整理の講演もありますよ」とすすめられて、
「せっかくだし…」と軽い気持ちで聞いてみたのですが──
結果的に、この講演が一番心に残りました。
家のこと、親のこと、自分のこと。
どれも“まだ先”と思っていたけど、
「元気なうちに考えるからこそ意味がある」んだと感じました。
講師の言葉の一つひとつに重みがあり、
「知らないままでいなくてよかった」と、素直に思えた時間でした。
改めて、教えてくれた職員さん、ありがとう。
そしてこの記事が、どこかで同じような悩みを抱える誰かのヒントになればうれしいです。
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